音楽家のための終活セミナーシリーズ Vol.1「終活」編&Vol.2「相続」編レポート
ピアノの先生・ピアノ/音楽愛好家特有の相続やモノの処分に関するお悩みが聞かれるようになったことを受け、ピティナでは2020年から終活・相続・遺言等に関連するセミナーを開催しています。
2024年は、年4回の終活セミナーシリーズが開催されています。ピティナ会員に向けた「終活関連相談」の窓口でもある齋藤弘道先生を講師にお迎えし、誰もがいつか向き合う「身じまい」の正しい準備の仕方について教えていただく機会となっています。
今回は、3月・6月に開催したVol.1・Vol.2の様子をお届けします。
さいとう・ひろみち◎みずほ信託銀行にて遺言信託業務に従事し、遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げ(後の全国レガシーギフト協会)。2014年に野村信託銀行にて遺言信託業務を立ち上げた後、2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」「非営利団体向け不動産査定取次サービス」等を次々と実現。
上半期に開催したVol.1とVol.2は、「終活」の基礎知識と「相続」がテーマ。後半の「遺言」「遺贈寄付」の前段となる知識を丁寧に解説していただきました。
第1回の「終活の基礎知識」編は、終活は気になるけれど「そもそもなぜ終活が必要なのか?」「やらないとどうなってしまうのか?」「いつから始めればいいのか?」といった、誰もが不安を抱えつつ第一歩を踏み出せないテーマから始まりました。
現代の大きな課題の一つが、家族・親族のいない、または家族・親族と縁遠い「おひとりさま」の増加です。子どものいない夫婦も、どちらか一方が死亡した時、もう一方がおひとりさまになります。また、子どもがいても「子どもとその家族に迷惑をかけたくない」という理由で、認知症などに備えて自分でできる終活を始める方も増えています。
こうした方々へのサポートとして、見守り契約や死後事務委任といったサービスを提供している企業や士業がありますが、こうしたサービスには、心身とも健康で判断能力があるうちに相談しておく必要があります。今はまだ大丈夫と思っていても、身体の不調や判断能力の低下は自分で考えているよりも早く進行するケースがあります。いざ身体障害や判断能力が低下した時に始めようとしても、依頼する相手を調べたり契約したりといった行動を自らとれない可能性があるのです。
とはいえ、現時点で健康だと第一歩を踏み出しにくいのが終活のムズカシイところ。 そこで齋藤先生からは、「エンディングノート」の重要項目のチェックや、クレジットカード・保険証券などの重要書類を保管する「終活ファイル」のつくり方など、今からでも着手しやすい終活の第一歩のレクチャーもしていただきました。
第2回は、自分の法定相続人は誰なのか?「相続財産」はどこからどこまでなのか?相続税はどうやって計算するのか?といった「相続」の基礎知識を学ぶとともに、特に注意しなければいけないポイントを学びました。
ドラマや映画の世界では「家族・親族間での遺産の奪い合い」がよく描かれていますが、現実には遺産分割協議の場で「財産の分配割合」を巡った争いが起こることは少ないと言います。相続でより問題になりやすいのは、「どこにどんな財産があるのかわからない」こと、「分割する相続財産の範囲について相続人で意思統一できていない」こと、そして、「生前の故人と相続人の関係性やわだかまりが原因となって話が進まない」ことです。
遺産分割協議では、生前贈与された財産は、相続財産に持ち戻され、遺産分割の基礎財産に加算されます。つまり、生前のうちに計画的に家族に財産を贈与しても、遺言を作成していなければ、亡くなった時には生前贈与はなかったことになってしまいます。
また、生前に故人と同居していた家族や療養看護に関わった相続人がいる場合、どのように配慮するのかを分割協議で決めることになりますが、往々にして個々人の感情が先んじて議論が前に進みません。
特に財産を多めに渡したい相手がいる場合、または渡したくない相手がいる場合であっても、遺言を含む総合的な対策をしていなければ、望んだ割合で財産を渡すことができない可能性が高いのです。家族にとっても、故人が望む分配の割合がわからないために分割協議が長引き、困ってしまうケースが多くあります。
いずれの問題を解決するにも、「遺言の作成が必須」と齋藤先生は語ります。遺言は、故人の「おもい」を最も確実に残せる手段です。
次回Vol.3では、「おもい」を確実に残す遺言の作り方について学んでいきます。
法定相続情報証明制度も初めて知り、自分でも調べてみようと思いました。