「勉強会」というコミュニティに参加し、仲間とともに指導力を研鑽する
「ピアノ指導者」は、基本的にひとりで指導をすることが多く、独学で日々のレッスンの悩みに立ち向かう人が多いと耳にします。ピティナの支部やステーションでは、「勉強会」を開催しているところもあり、ときに、ベテランの指導者に師事しながら、ピアノ指導者が抱える悩みを共有し、一緒に学び、時には励まし合って学ぶコミュニティもあります。
今回は、ピティナ・ピアノコンペティションもテーマにしている勉強会をご紹介いたします。
毎年、様々な企画をして、メンバーと一緒に指導力の向上に取り組んでいます。
20年以上ご指導いただいている南の国のアリスステーション代表(鹿児島)の池川 礼子先生に、3年前からは、「コンクール」を通じて皆で学び合う、貴重な勉強会も開催いたしました。
ピティナ・ピアノコンペティションの時期に「コンペチーム」というメンバーを結成。参加した先生方が、モデル生徒の演奏やレッスン風景を動画で撮影し、その様子を見ながらメンバーで感想を書きあったり、池川先生からも貴重なアドバイスをいただくといったような、ちょっと勇気がいるような内容。ですが、このやり方だと、具体的な指導の改善点が見えてきて、レッスンをどう展開すると効果的なのかなど非常に勉強になりました。
2023年は、コンクールを題材にした勉強会をさらに充実した内容にすべく、ピティナのコンペを皮切りに、秋冬と続くブルグミュラーコンクール、バッハコンクールなどを通して皆で学び合う場を計画しています。
3月 | 課題曲の選曲と課題曲を弾いてみての勉強会:曲について研究し生徒さんの実力に合った曲選びをしてみる |
4月~5月 | 指導者ライセンス筆記試験 勉強会:課題曲の中身について勉強する |
5月 |
|
9月 | バッハコンクールの勉強会:冬の予選、全国大会に向けて |
と、上記の通り、おおよその企画を立てています。
コンクール本番前などに予定している生徒同士の弾き合い会では、先生方に演奏を聴いてのコメントを書いていただき、メンバーで考えていく学びの場も企画してしています。
コンクール「通過」のための勉強では決してなく、「コンクールの課題曲を通して学ぶ」ことで普段のレッスンのレベルアップを図りたいという取り組みです。
私自身は池川先生の側でピアノ指導者としての勉強の仕方や学ぶ意味も知りました。
ピアノ指導者の悩みは共通したものが多く、そういった悩みも一人で抱えずに一緒に共有し、励ましあいながら指導力を高めることができればと思っています。
年間通して、スタッフの先生方と集まって勉強会を開催していますが、春~夏は、コンペの課題曲も視野に入れた内容も取り入れています。
昨年5月から7月にかけては、事前に先生方から課題曲の中から、取り上げて欲しい曲や、日々それぞれのお悩みがある方はお悩みポイントも挙げてもらい、それについてレクチャーをしていきました。
私は、コンペ指導は、普段のレッスンの鏡だと思っています。今のところ、スタッフの中でコンペに生徒さんを参加させる先生は、まだそう多くはないのですが、日々のレッスンで使っているテキストの曲と課題曲の関連ポイントを解説したり、「アナリーゼ」の重要性なども取り上げたりする事で、普段のレッスンにも活かせて、なおかつコンペ課題曲のレッスンにも活用できるように配慮しています。
私自身、約15年前までは、コンペどころか、ピティナの存在すら朧げにしか知らなかったのですが、息子と姪っ子のコンペ本選を聴きに行って、僕も楯が欲しい!言い出したことがきっかけでピティナに入会すると共にコンペへの第一歩を踏み出しました。私は子供の頃にコンクールに出たこともないですし、最初は、コンペ指導のポイントもわからず、仲間もおらず、一人きりでの手探り状態。いただいた講評用紙やコンペ会場での演奏も参考に、また3年目からは、コンペ課題曲セミナーにも参加して、徐々に 「学び方」「聴き方」を知ると共に、やはり基礎力の大切さを実感。日々の レッスンで基礎力という土台をしっかり固めていなければ、いかに表現力を高めようとしても、上っ面だけの演奏になってしまいます。
人前で発表するクオリティをあげ、表現する喜び、聴いていただける幸せに触れてもらうことで、長くピアノと付き合うピアノ学習者が育つのではないかと感じています。そういった生徒が育つピアノ指導者がたくさん増えてくださると嬉しいですよね。
先生が変われば生徒は変わります。自身の手探りの頃の心細さ、自分に足りないものは何だろうと、日々、暗中模索した経験を活かせると嬉しいですし、コンペ指導のみならず、日々のレッスンのクオリティを上げられるべく、勉強会を活用いただければと思っています。
また、勉強会の後は、ランチ会も開催したりして、ランチ会での交流もまた、先生方の日々の活力にもなっているようです。
著名な先生方のセミナーを受講された後、「先生、ここがわからないのですが」と個人的に相談にのる機会が増えたので、少人数制の気心知れた先生のグループ内で、著名な先生方をお招きするようにしたのが勉強会の始まりです。人数が多い中で、「こういうこと質問しても大丈夫なのかな」という不安が先立ち、分からないところがあっても質問がしづらいと感じておられる先生は少なからずいらっしゃいます。でも、気心知れて、どんなことを言っても大丈夫というあたたかい、アットホームな環境があれば、自分のわからないところも質問しやすくなり、講師の先生も深いポイントまでレクチャーくださり、大変充実した学びの時間になります。勉強会は、セミナーと実際のレッスンをつなぐ場でもありますね。
コンペの時期は、毎年工夫しながら勉強会をしますが、2022年は、ホールでの生徒の弾き合い会で、各生徒の演奏を聴き、「楽譜に書き込みをする」という企画をしてみました。審査員のようにコメントを書いてみるというアイディアもあったのですが、短い時間でコメントを書き上げるのは大変なことです。でも、楽譜への書き込みやチェックであれば、日々のレッスンでもやっていますから、みなさん、熱心に取り組んでくださいました。書き込みした楽譜は、生徒を通じて、指導者のもとに届きます。自分も気になっていてかつ他の人が気になった箇所、自分は気になったけど他の人はそうでもない箇所、他の人が気になっているのに自分は気にしていなかった箇所、すべてが勉強になりました。
様々な「できなかった」経験があるから、どうしたら「できるようになるか」という指導の引き出しが溜まってきます。それらの試行錯誤の積み重ねから私自身が得た学びが、他のピアノ指導者の糧となって、ピアノと一生楽しく関わっていける生徒が増えるならば幸せなことです。
開催しているステーション
ステーション