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徹底研究シリーズ2021 第1回~3回質問コーナーより

徹底研究シリーズ2021 小林仁 J.S.バッハ インヴェンション講座

徹底研究シリーズ2021「小林仁 J.S.バッハ:インヴェンション全4回」もいよいよ最終回を迎えます。「教材として」「芸術作品として」さらに「作曲学的な対象として」という3つの観点から、現代におけるインヴェンションの位置を探り、その音楽の本質に迫る本シリーズ。講座の後には、視聴者からの質問に答えるコーナーも好評で、多くの質問が寄せられましたので一部をご紹介します。

第1回~3回質問コーナーより
教材について
インヴェンション前プレインヴェンションを使用している。ポリフォニー観点からなかなかスムーズに移行できません。何か良い教材がございますか。

生徒さんの進歩の具合にもよると思いますが、プレインヴェンションもよいと思いますが、私は、バッハに関していうと、アンナマグダレーナによる音楽帳がありますね。全曲を収録された楽譜を使用すると面白いと思いますが、このインヴェンションのようなポリフォニー的なものもあるし、(バッハ以外の作曲家のものもありますが)和声的に書かれた音楽についてですね、単にメロディーと伴奏ということではなく、通奏低音の観念から考えるべき話だと思いますが、私はよく、移行期の生徒さんには、アンナマグダレーナの音楽調、この中にいろいろな傾向の曲が混ざっているので、その中でよい教材かと思います。

先生の勘が得られるインヴェンションの練習順があれば教えていただけると幸いです。

いろいろな観点から考えられると思いますが、まず技術的な観点から、やさしいものから順にということですが・・。まずこれを考えるに、ぜひWヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帖(プレアンブルム)をご覧になることをお勧めします。このWFバッハによって書かれたインヴェンション、当時のプレアンブルムという題名で作られたものですが、これは概してやさしい順に書かれています。♯や♭が少ない順から書かれています。技術的にも易しいということと、ここでは2番にあたるc-mollが一番最後に来ている、それはやはり難しいからなんですね。これも参考にされるとよいと思います。

子供のころに倣ったプラルトリルの入れ方は、書かれた音から2度上→元の音の順序でしたが、最近は2度上から初めて元の音・・・
こどもは一つ音が増える分、難易度があがってしまいますが、例えばコンクールではどのように弾くのが望ましいでしょうか?

私はいい音がすればどちらでもいいと思っています。
だけど基本的にいうと、その時代は書かれた音より1音上から、というのが基本だということは年頭においていただいて、それが事情が許せば、上から演奏したほうが、(例えば楽器の差にもよります)古楽器だとよい効果が表れるものでも、現代楽器だとうるさく感じる場合もあります。楽器の差というのも考えに入れられたらよいと思います。
コンクールでどう弾くべきか?という点については、それが分かれば私の生徒はみな優勝しています(笑)。
「こどもが自然に演奏できる状態」というのが一番望ましいといえると思います。いろいろなことができるようになってきたら、原則こうなっているけれど、これはどうか?というアドバイスになるかと思います。

インヴェンションの中でどういう難易度の感じで分けたらよいでしょうか。

最初は1番から入ると思います。どういう順序が自然か、ということ
よく考えてみると、生徒さん次第ということがあると思います。早いパッセージは得意だけれどゆっくりは苦手だとか、弾けているけれどトリルがうまくいかないとか、生徒さんによって得手不得手があると思うので、最終的には先生がどういう順序でやるか、をお決めになるしかない、という、、見もふたもない結論になるのですが。ヴィルヘルム・フリードリヒ・バッハの音楽帖の順序で、すこし順番は違うのですが、参考になると思いました。

バッハを教える時、弾く時アーティキュレーションを1番悩みます。 どのようにつけてもいいとは思うのですが、よりバロック音楽が生きるようにつけたいです。 良い方法を教えて下さい。

まず、これは間違っているよねというものとして、例えばカンタービレをスタッカートで弾く、など。一方、速い曲をレガートで弾くというはありえる。それぞれの人がそれぞれのやり方で最良の方法を見つけていく。一生の予想。違うやり方に対して、答えの根拠となるものをもっていれば、自分の判断がついてくる。こうした「判断」を一番大事にしたいと思っています。

作曲学的な観点より
ヘンレ版の新版が出ております。相違点がありますがお考えをお聞かせください。

私はこの新版をまだ見ていないのでお答えしかねるのですが。
いろいろな原典版をみるに際して、できればこのインヴェンションに関しては、バッハの自筆稿がもとになっている、どういう楽譜を作るにせよ、これを一番基本になっている。
厳密な考証を求める方は、インヴェンションの自筆稿(ペータースから販売されていますので)、こちらをお持ちいただくと、版の違いがなぜこうなっているのか、理由を探すのには、私が個々に申し上げるよりは、よい回答が得られるのではと考えております。

第1番はインヴェンション型でしょうか?

まあどれもインヴェンションですが、その中でもインヴェンション的な色彩が濃いというものです。それは「動機が短い」「同じ動機をずっと最後まで繰り返している」「それ以外の要素はあまり入り込ない」たとえば、本日の4番もインヴェンション型に入ると思います。

インベンションの初稿譜はペータースと伺いましたが、今も購入できるものでしょうか?

絶版にはなっていないので、私も時々ネットでみつけて、他の曲のそれなりに網を張っておくと、いずれ手に入ると思います。

インベンション5番はフーガ型ということですが、5番以前のように三部に分かれる形式ではないと考えてよろしいですか?

私は三部にわけて考えてみてもよいと思います。二部にわける考え方もあるでしょうし、すこし歪な形ではありますが、27小節目からははっきりした再現になりますので。第3部が短いアンバランスな形ではありますが、主調に戻るという点で3つに分ける。再現と考えるかコーダと考えるかどちらでもよいと思いますが、私は一応コーダを伴う再現と考えております。

長年インヴェンションと向かい合ってこられた小林先生が、小鍛冶邦隆先生のテキストを使っている理由を教えてください。 どの原典版を使われるのか、当初とても興味深かったので…

自分で勉強するときには原典版を使います。全部が全部信用できるとはかぎらないので、自筆譜をよりどころにしています。原典版の編集者のコメントや、バッハに対する考え方が編集の仕方に現れてくるという意味で(今回のように)校訂譜を使います。自筆譜は困ったときに参考にしています。

芸術的な観点より
インヴェンションの宗教的な結びつきとの考え方について。G=God、属七は受難、レトリック的な意味はあったのでしょうか?

もう少し後のf-mollのところでしようと思っていたものなのでその時に詳しくお話しようと思いますが、インヴェンションを書いたのはケーテン時代。一番バッハが宗教音楽とは縁の薄い(教会でなく王に務めていた) バッハは実際的な人なので宗教的な意識が強いというのはもちろん我々に比べればあったと思いますが、それがいちいち曲に全部現れているかどうかについては、私は、考えすぎる傾向にあるのではないかと思います。時に考えてみることは必要だと思いますが、曲の性格によってはそういうこともありうる、という程度にとどめておいたほうがよいのでは、と思います。これは、第3講座でゆっくり話したいと思います。

先生が、参考にされている、またはお勧めのピアニストのCDを教えて下さい。出来ましたら、イギリス組曲のCDもお聞きしたいです。

実はピアニストのCDはあまり聴いていません。初めから答えを知るとおもしろくないというのもありますが、レコード聴くなと昔の先生からしつけられたから、タブーのようになってしまったのかもしれません。勉強しているものについては、本番終わってから聴く。そうすると違いが見えてきておもしろい。次の経験に生かしています。

マタイ受難曲の演奏者について教えてください。(録音)

エリオット・ガーディナー古楽の演奏が好きで、よく聴いています。


最終回は、2/24(水)10:00より。第12番~15番を扱います。受講者の方は質問をお寄せいただくことができますので奮ってご参加ください。

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