ピティナ・ピアノセミナー

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小倉 貴久子先生セミナー(梅田・2020/12/21開催)

古典派の語法 〜当時ポピュラー音楽だったモーツァルト、ベートーヴェンを、現代のピアノで生き生きと演奏するためのヒント〜
講師:小倉 貴久子

2020年12月21日(月)にハーモニーホールにて小倉 貴久子先生をお招きし、「古典派の語法 〜当時ポピュラー音楽だったモーツァルト、ベートーヴェンを、現代のピアノで生き生きと演奏するためのヒント〜」を開催いたしました。

〈講義内容〉
・当時の楽器と現代の楽器を知る
・拍感と音の優劣
・アーティキュレーションの必要性

[1] 当時の楽器と楽譜を知る
古典派に限らず、すべての音楽において大事なことは、当時の音楽を知ること。現代のピアノは比較的どんなことも表現できる楽器だが、ピアノ以前のチェンバロやオルガン、クラヴィコードはそうではない。つまり、原典楽譜に書かれている記号は当時の楽器に合わせたものである。また、校訂楽譜に書かれている内容は、古典派以降の演奏法が使用されることもあるため、本来の音楽と解釈が違ってくる可能性がある。現代ピアノで表現するには、その点を考慮しなければならない。

[2] 1拍目は王様の拍!
古典派音楽は「拍感」がもっとも重要。18世紀は不平等社会であり、大切な1拍目は王様の拍と言われた。古典音楽はきっちりと全ての音を弾くイメージがあるが、実は拍感や音の優劣が必要。しかし、20世紀以降のソルフェージュでは一音一音に意識が集中し、拍感が失われている。これを改善するために、強拍から弱拍にかけて強拍を少し長く、そして弱拍はほんの気持ち弱めに、音の優劣をつける。また、4拍目の裏拍は一番意識しなければならない。この裏拍は、短めに弾き、1拍目に入る前に少しだけ音の無い時間を作る(切る)ことで、次の1拍目を強調することができる。

[3] クリアな音をレガートに
19世紀初期のピアノは、革のハンマーでクリアな音だった。当時の演奏家は、そのクリアな音をどのようにレガートに弾くかを工夫し、オーバーレガート(指を鍵盤に少し残す弾き方)をしていた。しかし、現代の演奏者は当時と楽器が違うにも関わらず、クリアな音を出そうとして一音一音を切って弾く人が多い。けれど、求められていることは「レガート」である。これは拍感を意識することで改善することができる。

[4] アーティキュレーションは言葉の子音
言葉には子音と母音があり、言葉を伝えるためには子音が必要。アーティキュレーションはこの子音と同じ役割をし、古典派音楽を表現するために必要不可欠。アーティキュレーションは、手首を使うと音楽が止まるので、必ず「指先」で行なう。このとき、ハイフィンガーではなく、鍵盤に指先をつけた状態で弾く。モーツァルトの時代は、鍵盤を上まで戻さないと次の音を弾くことができなかった。いわゆる、ウィーン式アクション。しかし、現代のピアノには鍵盤に遊びの部分が存在する。その遊びの部分で、ハンマーがどのように弦にあたっているかを感じ、色々なタッチで音作りが可能となる。


随所に 小倉先生の美しい演奏をはさみながらの解説で、魅力的な2時間となりました。コロナ禍の中、遠方よりお越しくださいました小倉貴久子先生、そして御参加くださいました皆さま、本当にありがとうございました。

Rep:ピティナ豊中シンフォニーステーション 安東佑由子

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