田崎悦子先生セミナー(表参道・2019/10/18開催)
Joy of Music 40+ vol.14 第2回(全2回)
2019年10月18日(金)にカワイ表参道コンサートサロンパウゼにて田崎 悦子先生をお招きし、「ピアニスト 田崎悦子の大人のためのピアノ・ワークショップJoy of Music 40+ vol.14 第2回(全2回)」を開催いたしました。
前回から2週間を経て第2回目も、たくさんの聴講生がレッスンに足を運ばれました。
まず吉田路子さんがショパン《幻想曲Op.49》を演奏されました。前回田崎先生からアドバイスのあった冒頭を意識的に演奏され、難曲を懸命に弾ききりました。今回先生がご指摘された中で強く心に残ったのは「テクニック」について。楽譜に書かれていることを読み取り、色々な音を出し表現できる、内容を掘り下げていけることがテクニックであるというご説明とともに、正確に弾けるようになってから表現をつけるという練習法の問題に言及されました。またショパンの持ち味である異名同音による転調が魅力的な199小節目からのLento sostenutoを、「今までとどこが違うか」を会場に問い、変化の要素を捉え演奏に反映させていく吉田さんの演奏から、演奏とは問い続けていくことを通して磨かれていくのだと感じられました。
次に演奏された井上真理さんによるリスト《巡礼の年第三年S.163》〈エステ荘の噴水〉は2週間を経て旋律の輪郭が右手のトレモロからはっきりと浮き出て、美しい詩が奏でられました。今回先生がご指摘されたのは全体のストーリーを考えること。オクターブを活かしフォルテシモで奏でる後半を、会場空間をも楽器だと考え、これまで溜めてきたエネルギーを放出することで、曲が引き締まりました。差を出すことで各々の魅力が引き立つということが《幻想曲》に引き続き大きなポイントのようです。また音色を変え演奏することに関して、「絵の具だけでなく、筆も変える」というアドバイスが印象的でした。
最後に乾佳世子さんがブラームス《8つの小品》より第1、2番を演奏。前回のレッスンを経て、特に第2曲は真面目な中に遊び心を持ったブラームスの世界が鮮明になったように感じられました。レッスンでは、前のリストと比べ、全ての音を歌うブラームスの弾き方や、内声の旋律は意識的に出すことなどのアドバイスがありました。第2番の冒頭は弱拍にアクセントを伴って出てくる旋律にブラームスの心の棘があり、拍を感じながら弾くことで、曲のユーモアが強調されました。
今回のレッスンも、受講生、聴講生どちらにとっても学びの多いレッスンでした。田崎先生が暗譜について語った「刀を振り回して暗譜しようと思うと逃げる、大切に温めようと思うと知らぬ間に暗譜している」という言葉には、音楽への愛が溢れていました。
(カワイ音楽振興会ホームページより転載)
Rep:W.T.