岡部玲子先生セミナー(経堂・2019/09/26)
2019年9月26日(木)にスガナミ楽器(株)経堂店 ミュージックホールにて岡部 玲子先生をお招きし、「ショパン最新エディション情報エキエル版、他の版と何がちがう?-楽譜から見えてくる、本当のショパン像-」を開催いたしました。
ショパンの作品は世界中のピアニストによって演奏されるだけでなく、ピアノ教育の必修曲ともいわれるほどです。そのため、さまざまな出版社から数多くの楽譜が出版されています。出版されている楽譜が校訂者や出版社によってちがう!ということがショパン作品はより顕著に見られます。そうした事情はどのような経緯からでたものなのか?そしてそれぞれの出版社のちがいとは?あらためてショパン作品について知ることができた時間でした。
"原典版"とは校訂上の付け足しや演奏をしないで作曲者の意図を汲み取り校訂したものになります。ショパンの楽譜は日本では"パデレフスキ編"が有名ですが、こちらはショパン没後100年を記念して原典版をめざして出版されたものであり校訂者の手が加えられすぎている節がみられるのです。ただこれがだめという訳ではなく、理解した上で演奏することでより深い解釈ができるのだと感じました。現在はエキエル版、ペータース版、ヘンレ版、ベーレンライター版など様々な出版社で研究されており、楽譜は進化していくのだと感じました。
ショパンの作品には、作品番号が74までついています。ところがショパン自身が生存中に自分で番号をつけて出版したのは、作品65まで。66から74までは"遺作"といわれているものになります。この遺作をめぐってのショパンの親友フォンタナのエピソードも人間臭さを感じました。ショパンは生前「自分が出版しなかった曲は破棄してほしい」と望んでいましたが、ショパンの死後にそれらの作品を出版してしまったのです。有名な"幻想即興曲"はフォンタナのおかげで我々が知ることができたのです。その分、またいろいろな解釈があり、遺作はとくに校訂がむずかしいようです。
最近ではショパン国際コンクールを題材にしたメディアが注目されています。そして2020年はショパン国際コンクール年!今回得た知識でコンクールを見てみるのもおもしろいかもしれません。
岡部先生、楽しいお話をありがとうございました。