鈴木弘尚先生セミナー(名古屋・2019/05/20開催)
流れるフレーズのための指導法
2019年5月20日(月)に日響楽器 池下店2Fホールにて鈴木 弘尚先生をお招きし、「2019年度 上半期ピアノ指導法 シリーズセミナー 第2回(全4回)流れるフレーズのための指導法」を開催いたしました。
音楽は、時間の芸術、記憶の芸術、イントネーションの芸術である。2つのフレーズがある場合、1つ目のフレーズを聴き手に記憶してもらうことで2つ目のフレーズが生きてくる。記憶してもらうには、イントネーションによって意味のあるものにし、聴き手に届ける事が大切。演奏は、絵画に例えると描いている時間を見せているようなもの。
このようなお話からセミナーは始まりました。
フレーズは『開始→中心→終わり』でできているが、もともとは平らなものが、リズム、音の高低、ハーモニーなどの要素が複数重なって引力が発生し様々な形となる。弾き手は、中心に向かっていく動き、中心を通り過ぎて終わりに向かう動きを大切にフレーズを演出する。聴き手は、フレーズの中心がどこにあるのか、そのフレーズが終わった時にわかる。なんとなくの感覚だけで演奏するのではなく、このような考えを裏付けする事で伝わる演奏になる。
そして、レッスンでもよく使われる曲を例に挙げ、演奏を交えながらお話しくださいました。
- クレメンティ/ソナチネOp.36-3
- ショパン/ワルツOp.64-2 ・ノクターンOp.9-2
- メンデルスゾーン/ベニスのゴンドラの歌
- ブルグミュラー/ゴンドラの船頭歌・風の精・アラベスク・やさしい花・せきれい~etc.
音の流れを風に例えて、風は目に見えないけどそれに影響をうけるもの(木や葉っぱの揺れなど)により見えるものとなる。音楽においても風による気圧変化があって音が流れる。伴奏で風を送ることでメロディが動くことや、16分音符のような軽い音符は風によって動きやすいこと、フレーズの頂点に向かって風が吹き上げるイメージを持つこと。
また、弾いている自分にとってメロディーがどこにあるのか、常に位置関係を意識すること。1つのフレーズの中で音がどこから入ってどの方向に動くのかイメージすること。メロディーが表と裏が対になっている場合、裏を弾くときには先ほどの表を感じながら違った音色や響きを使うこと。これから弾くフレーズを、形、奥行きなど3次元でとらえて意識することが大切。
先生がおっしゃる内容は、自分の演奏のためにも生徒さんの演奏のためにも肝に命じておきたいことばかりでした。
そして、鈴木先生が奏でられるピアノの音は、大変美しく多彩で、その素晴らしいピアノからもお話しからも感動と多くの学びを頂きました。
鈴木先生、本当にありがとうございました。
Rep:ピティナ名古屋支部 赤松 佳容子